プレイレビュー
タクティクスオウガ・リボーン(92点)

author:aoto
2022.11.15

© 1995, 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
「記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。」
- タイトル
- タクティクスオウガ・リボーン
- ハード
- PS4,PS5,Switch,PC
- 点数
- 92点
- WEB
- スクウェアエニックス公式
概要
タクティクスオウガは1995年にクエスト社より発売されたシミュレーションRPGで、民族戦争を題材にした重厚なマルチストーリー展開・独自のゲームエンジンを用いたゲームシステム等が高く評価された。
今作はそのタクティクスオウガのリメイク作である運命の輪をベースに再リメイクしたものとなっている。
面白い点
フルボイス化された名作ストーリー
三国志の様な国家間・民族間における戦争をモチーフにした重厚なストーリーは今作でも健在で、今作はイベントシーンフルボイス化・BGMがオーケストラ音源で再録された事で、より臨場感や迫力が増している。

フルボイス化した事で、見慣れたOPイベントも迫力が数段上がっている。
本作はシナリオが途中で分岐するのだが、ルート毎に性格が(表情まで)大きく変わるキャラの演じ分けも絶妙・オーケストラ音源で再録されたBGMの迫力もあって、ゲームをプレイしているというよりもまるで映画を観ているようだ。
快適になったシステム周り
シミュレーションRPGという事で戦闘が長くなりがち・全ユニットに命令を出す事が面倒といった煩わしさを考慮してか、本作は切り替え可能な倍速モードとAIでユニットを動かす機能が実装されている。
このAIはユニット毎に個別に設定・簡単に切り替えられるので、演習モードではヒーラー役のクレリックをAI設定・オート化して回復に回らせて時間短縮するといった事も可能。
攻撃や移動といった機能UIもオリジナル版を踏襲したアイコンデザインに戻っている等、前作運命の輪で不満だった部分も改善されている。

UIもオリジナル版を踏襲したアイコンデザインに。
運命の輪でもあった立体的なマップを見易く2D表示したり、行動順を下部に表示したりといった便利機能はそのままで改善すべき点を改善、PC(Steam)版ではマウス操作にも対応していたりとシステム周りは非常に快適になっている。
この他にもショップでの合成で材料が足りない場合に店側が材料を用意して買わせてくれる(材料を集めにいく必要が無い)といった改善や、エンカウントバトルが廃止(フェイダダウ!というボイスも無くなったのは残念だが)されたりといった部分もあって、オリジナル版や運命の輪と比較してかなり遊び易くなったと感じる。
レベリングシステム
筆者が運命の輪で一番改悪されたと感じていたのがこの部分だったのだが、レベルがオリジナル版同様のユニット毎に戻された・獲得した経験値はチーム全体で管理されてクリア時に分配される方式となったので、過去作に比べてレベリング作業の負担が大幅に軽減されている。
レベルを上げすぎてゲームが破綻しないように進行度合いに応じたレベルキャップも設けられており、これによってシナリオ進行の為の基準レベルもわかり易くなった。

右上のUNION LEVELがレベルキャップで、このキャップ以上レベルを上げる事が出来ない仕様に。
高レベルの演習に低レベルのキャラを加えて一気にレベルアップさせる俗に言うパワーレベリングも可能なので、育成負担から運用を諦めていたユニットを運用したり、色々なクラスを育てて運用するといった事もやり易くなっている。
問題点
プレイングの幅を狭めた
本作をプレイしていて一番感じたのがこの点で、端的に言えば「遊ばせる範囲を決めてその中で遊ばせている」という一言。
制作側が想定した遊び方以外では遊ばせない雰囲気や、ユーザーの自由な攻略を許さない雰囲気というのを追加システムや改善点から見て取れるのだ。

クラス間のスキル継承の仕様変更等もまさにこれである。
シミュレーションゲームである以上バランス調整のし易さは必要なのだろうが、これとプレイングの自由度はトレードオフの関係にあるので、キツく制限しては面白くなくなってしまう。
思う事
バフカード
新システムかつ影響が大きいシステムなので発売当初から賛否の割れているバフカードシステムだが、これも上記問題点同様開発側が決めた「遊ばせる範囲」の1つである。
オフに出来る様にして欲しいという意見を良くTwitter等でも見るが、そもそも本作はバフカードありきのバランスに調整されているので、バフカードが無くなると全体の難易度(特に4章以降)が高くなり過ぎてしまう。
筆者はバフカードに関しては「これはこれでゲーム性としては面白い」と思うのだが、倍率はもう少しマイルドにしても良いと思うし、ボスユニットが最初からバフカードを4枚持った状態なのも正直やり過ぎ感や不公平感を感じてしまう。
ローグかえして
本作ではローグが敵専用クラスになってしまい、プレイヤーサイドはクラスチェンジする事が出来ない。敵からアイテムを盗むスティールも廃止されてしまっている。
これに合わせて過去作に比べてドロップ周りがかなり調整されており、敵からレアアイテムを盗んで入手したりといった楽しさは無くなってしまった。
個人的にはこの点がかなり残念だ。
総括
ゲームとしては間違いなく名作・手放しで人にお勧め出来る出来なのだが、新システム(バフカード)の捉え方で評価が割れそうな印象を持った。
ゲームシステムとして云々・バランス云々以前に「これ要る?」と感じる人も多いだろうし、何故追加したのかわからないという人も多いと思う。
筆者は上記の通り「これはこれで面白いがもう少しマイルドにして欲しい」というのが率直な感想だ。
AGIがWTに影響しなくなったりオリジナル版からかなりのシステム改変が入っているので今更オリジナル版のゲーム性云々は言わないが、新しいタクティクスオウガを担うにしては少々大味過ぎるシステムだと思う。