プレイレビュー
カプコンファイティングコレクション(88点)

author:aoto
2022.06.26

- タイトル
- カプコンファイティングコレクション
- ハード
- PC,PS,XBOX,Switch
- 点数
- 88点
- WEB
- CAPCOM公式
概要
人気タイトルである「ハイパーストリートファイターII」や「ヴァンパイア」シリーズ全5作品、ストリートファイター初のパズルゲーム「スーパーパズルファイターII X」や可愛らしいキャラクターが特徴の「ポケットファイター」。秀逸なメカデザインが目を引く「サイバーボッツ」や家庭用機で初めて遊べる「ウォーザード」の全10作品を収録(公式サイトより一部引用)。
アーケード規準(完全移植)のゲームにネットワーク対戦モードとトレーニングモードを搭載したコレクションパッケージとなっている。
面白い点
今回はコレクションパッケージという事で、収録タイトル毎に面白い点や問題点を記載していこうと思う。
ハイパーストリートファイターII
個々のキャラクター性能を初代ストリートファイターIIから最終作となるスーパーストリートファイターIIXまで自由に切り替える事が出来る様になったストリートファイターIIの決定版的タイトルの移植作。
勝利ポーズや顔絵といった細かい所も選択したバージョンに準拠しており、X版のキャラクターはバグが修正されたバージョンとバグあり(ガイルの「真空投げ」といった一部の致命的なバグは修正されている)のオリジナル版を選択して使う事も出来る徹底ぶり。
バグが残っているオリジナル版を使用する場合は、キャラクターセレクト画面でスピード選択後にバージョンを選択する所でスタートボタンを押しながら「SUPERX」を選ぶ(成功するとピロリンという音がする)と使用する事が出来る。

オリジナル版のバグも一部残してあり、修正版と選択して使用する事が出来る。
一例として筆者が使用していたオリジナル版Xバルログのバグを解説するが、このバグはため+キックで出せるスカーレットテラーという技(写真赤枠部分がコマンド)を使用する際、方向のためが完成していれば方向にレバーを入れても(写真緑枠部分)溜めが持続可能・そのままに入れてキックボタンを押せばスカーレットテラーが出せてしまうというバグだ。
細かいバグではあるが、これがあるので溜めさえ完成していれば後ろに歩きながら無敵対空技のスカーレットテラーを出す事が出来てしまっていたので、オリジナル版と修正版とでは立ち回りに結構な差が出る。
致命的なバグは仕方が無いが、こういった軽微なバグが両方収録・使い分けが出来る仕様になっているのは遊びの幅を広げるという意味で面白いと思った。
ヴァンパイアシリーズ
人によっては今回のコレクションのお目当ては完全にこのタイトル(ヴァンパイアセイヴァー)だろう。
当時ゲームセンターでガチ対戦をしていた人が家庭用でガチ対戦を楽しむにはうってつけのタイトルとなっており、ネット対戦環境やトレーニングモード環境も充実している。
基本的にアーケード規準となっているが、ヴァンパイアではキャラクター選択時に通常は使用出来ない「フォボス」と「パイロン」の2体が超強力なボス仕様のまま使用可能であったりといった違いもある。

改造基盤以外では当時アーケードで絶対に見る事が出来なかったVS画面。
ヴァンパイアシリーズに関してはアーケードの完全移植にボス使用可能といった付加価値を付けた対戦環境の決定版と言い切れるクオリティなので、PS3やXBOX360でリザレクションを引っ張っていたプレイヤーの人にとってはこれだけを目当てに購入というのも大いにありだと思う。
サイバーボッツ
筆者の一番の購入動機になったタイトルがこのサイバーボッツなのだが、こちらも他タイトルと同様アーケード規準の完全移植にトレーニングモードとネット対戦モードを追加した形となっている。

個性的なメカデザインは今見ても全く古臭さを感じさせない。男の子の好きな物が全部入っている。
サイバーボッツに関してはこれまでも移植はあったが、快適なネット対戦が可能という点が今回のコレクションの一番の魅力だろう。筆者もまさかサイバーボッツのネット対戦が可能になる日が来るとは夢にも思わなかった。
サイバーボッツに関してもヴァンパイア同様ボスキャラが使用可能になっているといった細かい違いはあるが、サイバーボッツは元々アーケード版でもボス機体を含む隠し機体が使用可能だったものが簡易コマンドで簡単に使用出来る(オリジナル版にも切替可能)様になっている。
隠し機体の簡易コマンド一覧は以下の通り。
- ヘリオン
- ワーロック
- (2P時は)
- ゲイツ
- (2P時は)
- スーパー8

当時ゲーセンで出せたらドヤれたレベルのワーロックも簡単に出せる様に。いい時代になった。
上記コマンドをVA選択直後(ポーズを取るまでの間)に入力すると、選択していたVAが上記のVAに差し替わって使用(ワーロックとゲイツは1Pと2Pでコマンドが反転するので注意)する事が出来る。
サイバーボッツに関してはキャンセルやブーストを利用した立ち回りが独特でとっつきにくさを感じると思うが、その分自分の思い通りにシステムを駆使して機体を動かせる様になると一気に楽しくなる。是非トレーニングモードで練習して慣れるまでプレイして貰いたい。
余談だが、アーケード版で隠し機体を出すコマンドは入力時間の短さからかなり難易度が高かったのだが、何故か筆者は当時ワーロックまで出す事が出来た(隠しキャラのコマンド入力だけ異様に上手い)ので、ワーロックで遊んでいた筆者を見た知らない人からコマンド入力を頼まれてお礼にジュースを奢ってもらった思い出を今回の記事を書いている時にふと思い出した。

超強力なラスボス機体ワーロック。当然使用コマンドも隠し機体の中で最も難しい。
ちなみにオリジナル版のワーロック使用コマンドは「A1A2BW」となっており、これをVA決定後のポーズを取るまでの約1.5秒の間に入力する必要がある。
上記の通りオリジナル版にも切り替える事が出来るので、気になった人はオリジナル版で上記コマンドを入れて当時の難易度を体感して欲しい。
ウォーザード
意外にも今回のコレクションが初移植となるウォーザード。
大型ボスとの一対一の対決を繰り返す格闘ゲームとアクションゲームの中間の様なゲームで、レベルアップといったRPG要素もある。

ドットによるキャラクターデザインのお手本の様な洗練された美しさ。
このゲームが凄いのは、美麗ドットの大型キャラクターを動作させているにもかかわらず欠けや処理落ちが殆ど無い(皆無と言ってしまっても良いレベル)所で、当時大々的に広告・ウォーザードと共に出荷された新基盤(CPシステムIII)の性能の高さが伺える。
ゲーム的には使用キャラクターは4体と少ないものの、ボスは合計8体(変身するラスボスも含めると9体)とボリュームがある。固定ルートで進むゲームなので、レベルアップを駆使してパターンを最適化しながら攻略を楽しむゲームと言えるだろう。

CPシステムIII基盤の美麗ドット絵でアニメーションも滑らか。今でも十分通用する。
前半パート(最初1~3体目までのボス)は難易度が低くなっているが、後半ルートのボス戦は難易度が高くなっており、ハイジャンプといった基本システムを活用してパターンを見切って倒していくトライ&エラー的な面白さがある。
ポケットファイター
ストリートファイターやヴァンパイアシリーズのキャラクター達がデフォルメされて可愛く・攻撃モーションや必殺技もコミカルになっている。
システムは攻撃ボタンが3ボタン化されてシンプルになっており、フラッシュコンボを筆頭に簡単操作で強力な攻撃が使えるので初心者でもとっつき易い。

見た目に反してゲームシステムは丁寧に設計されている。
このゲームが面白いのは、登場キャラクターの原作ゲームのシステムを上手に組み合わせた上で簡単に操作が出来るように調整している点、キャラクター間のバランスが良好という2点。
システムに関しては登場キャラクターの原作のシステムを組み合わせて設計されており、ウォーザードのジェムによるレベルアップシステムやヴァンパイアの移動起き上がりといったシステムを上手くまとめている。

簡単で爽快感もあるので、カジュアルゲームとしての出来が良い。
バランスに関しても特定のキャラクターが強過ぎるといった事はない・強いキャラクターには何かしら性能的な穴が設けてあるので、どうしようもない組み合わせや技相性等で明らかに不利な戦いを強いられるといった事も無い。
ダンの様に敢えて弱く設計されたキャラクターはいるが、それでも十分勝負になる・対戦は楽しめる。
スーパーパズルファイターIIX
筆者の購入動機の一番は上記「サイバーボッツ」なのだが、二番目の購入動機がこの「スーパーパズルファイターIIX」だ。
落ち物系パズルの中では知名度は低く、隠れた・知る人ぞ知る名作という位置付けのタイトルだが、こちらもコレクションに移植されてネット対戦を楽しむ事が出来る。

良くある落ち物パズルゲームに見えて中身は全く別物のゲーム性。
ノーマルジェムを繋げて大きな塊を作り、それを時折落ちてくる起爆ジェムで爆発させて相手を攻撃していくというゲームシステムなのだが、細かく連鎖を組むよりも大きな塊を作って爆発させていく方が相手に効率的に攻撃可能なので連鎖を組む必要性が薄い。
後はジェムで攻撃すると使用キャラクター毎に決まった配列で相手盤面にジェムを送る事が出来るのだが、これは一定ターン経過後に通常ジェムになるというシステムとなっているので、ギリギリの状態から相手に送られたジェムを利用して逆転勝利するという事が往々にしてある。

さくら側は一見ピンチに見えるが、実はこれは筆者側の計算ミス。さくら側は一発逆転可能なチャンス状態だ。
上記理由から、このゲームで勝利する為の本質は「いかに効率良く・早く大きい塊を作って相手に致死量ジェムを送れるか?」という一点に集約する。
パッと見良くある落ち物ゲームに見えて中身は全く別物のゲーム性を持っており、大きな塊を爆発させた時の爽快感はこのゲームだけのもの。連鎖を組む必要が無いのでレベルを問わず楽しめ、相手の攻撃を利用した一発逆転もあるので終盤まで気が抜けない戦いとなる。
更に言えば、上記システム的に初心者が上級者を倒すジャイアントキリングも起こり易い。この点もこのゲームがパズルゲームとして面白い部分だ。
筆者は今でもこのゲームはマーケティングに失敗して人気が出なかっただけで、その部分さえ上手く行っていれば他社人気パズルゲームと肩を並べる大人気タイトルになったと思っている。
問題点
初期設定の不親切さ
ファイティングコレクションの問題点で真っ先に挙がるのはこの部分だろう。
Twitterでも発売当初話題になった部分だが、このゲームはデフォルトで入力遅延が設定されているので、最初にメイン画面からオプションを開いて遅延と接続強度を変更する必要がある。

デフォルトで遅延フレームが設定されているので、写真の様に最初に変更しておこう。
写真赤枠のように「入力遅延0」・「接続強度5」に設定しておけば非常に快適なネット対戦を楽しむ事が出来るが、デフォルトだとコンボもままならない(特にヴァンパイアシリーズ)ので調整は必須だ。
リフレッシュレート設定
上記と前後するが、リフレッシュレートの設定も本体iniファイルからでしか出来ない点も不親切だ。
設定を変更しなければリフレッシュレートは60.00Hz固定なので、ゲーミングモニターでプレイしている人は最初にリフレッシュレート設定も変更しておく必要がある。

config.iniの記載を書き直す必要があるのは面倒。
上記写真の様にSteamライブラリ内の「カプコンファイティングコレクション」を右クリックし、「管理」メニュー内の「ローカルファイル閲覧」をクリック。出てきたフォルダ内の「config.ini」をテキストエディタで開き、15行目の「RefreshRate=60.00Hz」の数字部分を使用しているゲーミングモニターのリフレッシュレート値に変更して上書き保存する。
良くも悪くもアーケード規準
上記までで散々アーケード規準と述べてきたが、正直筆者はそこまでアーケードの完全移植にこだわる必要があるのか?と思う。
今回のファイティングコレクションの場合だと、全タイトル快適なネット対戦が可能という点は魅力だが、同時に過去の移植作にあった家庭用限定要素も無くなってしまっている。
一番割を食っているのは筆者イチオシの「サイバーボッツ」で、家庭用であったシェイドといったボスキャラクターのストーリーモードも無くなっている・家庭用限定機体(零豪鬼)を使う事も出来ない。
パズルファイターにしても家庭用にはストーリーモードといった一人プレイモードが搭載されていたのだが、これもアーケード規準のファイティングコレクション版には存在しない。
この点はもう少し何とかならなかったのかと思う。
思う事
ここからはプレイしていて思った事を記載していこうと思う。
複数待ち受けはスタンダード化すべき
地味な点ではあるが、ファイティングコレクションで一番感動したのが複数同時待ち受けが可能なマッチングシステムだ。これがあるので、例えばウォーザードで遊んでいる間にサイバーボッツの対戦を待ち受けるといった事が可能になる。
こういったコレクションタイトルだとプレイタイトル毎にプレイヤーが分散してしまうというのが問題になるのだが、このシステムではその問題を解決・好きなゲームをプレイしながら待ち受け出来る画期的なシステムだと思った。
グローバルスタンダード化して欲しい。
総括
クロスプラットフォームでないのは残念だが、心配していたネット対戦部分が上記でも述べている通り非常に快適・サイバーボッツやパズルファイターといった好きだったタイトルで快適に対戦出来るというだけでも筆者は買って良かったと思えた。
90年代カプコンアーケードゲームの集大成・決定版的なコレクションなので、対戦ツールとしての価値も極めて高いと思う。